な風な食事でしたが、真面目に務めているひとたちには、時々お三時があると云うことです。不思議に、どのひとも元気そうに太っていて血色がよいのですけれど、どのような食事も実に愉《たの》しいのだそうです。赤い着物から順々に青とか縞《しま》とかによくなってゆくのだそうですが、縞の着物のひとなんか、まるで近所のおかみさんがちょっと手伝いに来たと云う感じでした。
ここには無期のひともいるのだそうですが、そのひとたちはどんな風な気持ちなのかとおもいます。たった一人で散歩する、金網を板囲いでしきられた遊歩所のようなところもこの建物を囲った石塀《いしべい》のそばにありましたが、狭い金網の中にも青々と雑草が繁っていて、倉庫のようなところに、背の低い真赤なけしの花が一輪|可憐《かれん》に咲いていました。誰も眺める人もないだろう、この石垣のところに、ひょろひょろと咲いている沁《し》みるような赤い花の色は、時々、わたしの花のおもいでのなかへ、鮮やかな色をしてよみがえって来ることでしょう。今朝は浅間《あさま》の噴火の灰がこんなに降りましたと云うことで、庭木にも雑草にも薄白く灰が降りかかっていましたが、そのぽくぽく
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