類《たぐい》であった。
蒲団はもちろん私のもので、これは別れた男達の時代にはなかったものである。浴衣《ゆかた》のつぎはぎで出来た蒲団ではあったが、――母はこの蒲団を送ってくれるについて枕《まくら》は一ツでよいかと聞いてよこした。私は母にだけは、三人目の男の履歴《りれき》について、少しばかり私の意見を述べて書き送ってあったので、母は「ほんにこの娘《むすめ》はまた、男さんが違《ちご》うてのう」そのように腹の中では悲しがっていたのであろうが、心を取りなおして気を利《き》かせてくれたのであろう、「枕は一ツでよいのか」と、書いてよこした。私は蒲団の中から出た母の手紙を見ると何ほどか恥ずかしい思いであった。上流の人達と云うものは、恥ずかしいと云う観念が薄いと云う事を聞いているけれど――母親であるゆえ、下《しも》ざまの者だから、なおさら恥ずかしいと思うまいと心がけても、枕の事は、今までに送ってもらっているとするならば、私はもう三ツ新しい枕を男のためにねだ[#「ねだ」に傍点]っている事になる。そう考えてゆくと、ジンとするほどな、悲しい恥ずかしさが湧《わ》いて来た。
そのころ、与一は木綿《もめん》の
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