って、菅子の方が七ツも年上なのに、ひどく艶々している。啓吉は、よく喋る叔母達を見ていた。
「さア、ま、いいから、湯がわいたらさ、紅茶でも淹《い》れて手伝いなさい」
菅子は鏡台の前に坐って髪をとかし始めた。
「そいで、今度こそ決心したの……」
そういって蓮子は、瓦斯《ガス》のそばへ行って紅茶を淹れながら、思い出したように、
「男って解《わか》ンないわ」
といった。
「そンなに早く男が解っているくせにね……」
菅子が櫛を持った手を叩いて、くっくっ笑い出した。
十七
啓吉が、菅子や蓮子に連れられて、花火のポンポン昇っている戸外へ出たのは昼ちかくであった。
「何も、別れた奥さんに逢っていたからって、怪しいってもンじゃないでしょ、ねえ夫婦になって、一々腹を立ててちゃ仕方がない」
「そりゃア、お菅ちゃんが結婚してみないからだわ、前の奥さんに逢ってて腹を立てない女ってないわよ」
「そうかねえ……」
各々、蓮子にしても、寛子にしても自分の御亭主をいっぱし浮気者に考えているだけ、天下泰平なのだと、酔いどれの勘三や、空家ばかり探し歩いている人のいい三石の事を思い出すと、何とな
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