の間の部落へバスは着いた。下屋久の村役場へ行き、こゝで、案内して貰つて、私は黒砂糖を製造するところへ行つてみた。珍しく陽がきらきらと射してゐるので、かなり暖い。或る路地の奧ではバナナの實つたところもあつた。ところどころに噴井戸のやうな石疊をきづいた井戸があり、五六人の手で圍むやうなあこ[#「あこ」に傍点]の樹の大樹が青々と繁つてゐた。葉をむしると、柔く柿の葉のやうなかたちをしてゐた。このあたりまで來るとひげを垂れたがじまる[#「がじまる」に傍点]の大樹もかなり多い。蜜蜂の箱を並べたやうな墓地を珍しく眺めた。
萱葺きの小舍がけのなかで、甘蔗を砂糖に煮てゐるところへ出た。竹の莖のやうな甘蔗をモオタアのかゝつた絞り機械で、汁を絞り、それを煮て、白いにがりで[#「にがりで」に傍点]固めると、丁度かるめら[#「かるめら」に傍点]のやうな色をした砂糖が流し箱へうつされる。原始的な、素朴そのものの砂糖製法であつた。村の人達が集り、相寄つて黒砂糖をつくつてゐるのだが、この素朴な砂糖も、一斤について、十八圓の消費税がかゝり、その上にまた所得の税金がかゝるのだと、村の人はこぼしてゐた。
芭蕉の葉に、一
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