今月今日、七月七日に、三人、この三国ヶ嶽の絶項、三国神社の境内で落ち合い、その後の身の上を語り合って、連絡をつけようということ。
そして、そのあいだの七年間は、音信不通《いんしんふつう》。各自、道につとめて、たとえ街上《みち》で行き会っても、言葉をかけること無用たるべし。互に生死も不明のまま、七年目七年めの七月七日に、忘れなく三国ヶ嶽で――会う。かならず、会う。こういう三羽烏の生命《いのち》をかけた起誓《きせい》である。
そこで、この、はじめての七年目。
二十歳の伴大次郎は、二十七になり、こうして、江戸下谷練塀小路、弓削法外道場第一の剣の名誉として、今この思い出の山麓へ帰って来ている。
他の二人は、どうしたか。
弥四郎頭巾
「こういうわけで、私はこの山へまいったのです。で、その約束の日を待っておりましたので――今日は、七月六日。」
「おう、そう言えば、三国神社へ集まるのは、明日じゃな。」
「佐助に利七のふたりも、生きておりますれば、今ごろ登山《のぼ》っておるさいちゅうでござろう。七月七日の夜の引き明け、という申しあわせですから――どれ、そろそろ私も。」
無造作に
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