練で多くの女を手に入れ、それを十指のごとく使って、巧みに、好色出羽の身辺を絶えず探っていようという――いわば、一味の女間者の総元締めになるはず。
 それがまた、籤で決めたとはいえ、よく三人の柄に適《はま》った役割りで、大次郎は武を好み、佐助は、顔は二た眼と見られない醜面の生まれつきだが、おそろしく目端《めはし》がきいて、利に速い、これを商才に用いたら、必ず富豪ともなり得よう。そして利七は、山育ちだけれど、きりりとして苦み走った、まことに好い男で、色慾煩悩の籤を当てた時、
「ありがたい! 天下晴れて女狂いができる。」
 額部《ひたい》を叩いて笑った。
 三国ヶ嶽の三国神社から、三つの道が三方に下って、甲斐、駿河、相模へと、人間社会へ伸びている。
 三人の親友は、その三つの下山口《おりぐち》をとって、瓢々乎《ひょうひょうこ》として三国へ散ったのだった。ひとりずつ煩悩の分け前を追って――大次郎は相模路へ。佐助は駿河国へ。利七は甲州へ。
 が、三人とも、流れ流れて間もなく、いずれは煩悩の溜り所、江戸へ入り込んだに相違ない。
 その、別れる時の、もう一つの申し合わせは。
 今度、必ず七年目ごとの
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