煩悩を追って、銘めい、各その方面で求めるものを掴み、他日なんらの形でその力を協《あ》わせて、煩悩出羽に立ち向かおうというので。
 この相談――誓約が成って。
 籤《くじ》を引いた。
 笹の葉を三つの長さに手折り、根元を隠して、三人が一ぽんずつ取る。
 一ばん長いのが「名」中が「金」短いのは「女」ということにして。
 その結果。
「名」――伴大次郎。
「金」――江上佐助。
「女」――有森利七。
 伴大次郎は、名誉を追う。江上は巨富をあつめる。そして有森利七は、女をという三人三役。
 何年か後、この大次郎の名利《みょうり》の力と、佐助の金力と、利七――女のちからとで、煩悩の怪物出羽を仕留めようとの策謀なのだった。
 復讐も復讐だが、この、どっちの道でも、三人いちように豪くなり、それぞれ受持ちの分野で力を得ねば、と、二十歳の青年らしい興奮も、あったに相違ない。
 三国神社のまえで、三人はこんな誓いを立てた。
 仇討ちの準備に、伴大次郎は、まず剣腕をもって世に名を取らん。
 江上佐助は、そのいざという場合のために資金を積む――いかなる方法でも!
 そして、「女」を引き当てた有森利七は、色道の習
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