ものはあるまい。
これは、三人にとって、三国神社のお告げとも思われた。
お山の神様は、荒い神さまである。
山の若者の復讐は、炎烈《えんれつ》、野火のごとくに激しいのである。
この時から、煩悩の語は、三羽烏の執念となった。
笹籤
出羽守の煩悩に焼き払われた焦土の灰から、ここに、三つの煩悩の相《すがた》が立ち上ったのだ。
煩悩で煩悩を制すべく。
さて、名も金もない非力の三人が、煩悩によって金剛の力を獲るとは――?
名も金もない――そうだ!
男の煩悩に、三つありはしまいか。
名、金、そして女。
名誉慾。黄金慾。女慾――。
人を動かす原因《もと》にこれ以外のものはなく、また、これ以上の力はない。有史以来、人間はこの三つの煩悩に駆《か》りたてられて、われも人もこの三慾のためにこそ、孜々営々《ししえいえい》と生命を削《けず》る歩みをつづけてきたのだ――現世は、名、金、おんなの煩悩三つ巴《どもえ》。
男として、この三つを獲たものを強者という。
祖父江出羽守は、この三つを三つとも有《も》っているではないか。名はもとより、金も、そして、女も。
で、三人が三つの
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