、横に斜めに、何本もの斬尖が、反対側へ突き出ているのだ。中の女は、ひとたまりもなく一寸刻みに刺されたであろう、見物は声を呑み、顔色を変えて凝視めている。
「そう驚くことはない。これからが大変なのだ。」
と笑った大次郎、
「この刀は、すべて触れば斬れる逸物揃い、証拠のために。」
とまた、刀の束から二本とって、刀身をかちかちと打ち合わせて見たかと思うと、
「ええいっ!」
と裂くような一声。また一本を上から駕籠へ突き刺した。同時に、
「や!」
とまた今度は、駕籠の背後から、中の女の背を突き通すように、柄元まで駕籠へ刺し込む。
群集のある者は、もう眼を掩《おお》っている。
気の弱い女などは前にいたのが、そろそろと背後へ引っ込んで行く。
見る間にその三十本の刀全部が、前後左右と上から、柄まで駕籠へ刺されて、駕籠はまるで、栗のいが[#「いが」に傍点]のよう――。
中の女は、もう眼も当てられない肉塊と化し去ったことだろうが、それにしては、駕籠を通して、血がすこしも流れ出ないのが不思議と、見物は眼を見張っていると。
「これでよし。女はずたずたに刺し殺されてしもうた。そこで、お立ち会い!
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