、心まで一変するものであろうか。」
「そういうこともあるであろう。なにしろ、この自分というものが、すっかり変ったような気がするに相違ないだろうからな。」
「恐ろしいことだ。」
わいわい話し合っているところへ、遠く玄関のほうに当って、人の訪れる声がする。
立って行った弟子の一人が、すぐ引っ返して来たかと思うと、背後に、荒い滝縞の重ねに一本ぶっ差して、ぞっとするほど恐ろしい大柄な顔をした男と、鼠のような小さな男とが、そのまま案内役にくっ付いて、どんどん道場まではいり込んで来ていた。
見咎めた泉刑部が、立って来て、
「何だその方たちは何だ。何故取り次ぎを待たずに――。」
「伴大次郎さんにお目にかかりてえのですが。」
「大次郎先生は、もはやここにはおられぬ。」
「そんならあんた方に申し上げてもよいが、こちらのお嬢さんが、誰とも知れねえ白覆面にかどわかされて――。」
承知の由公も、そばから口を入れて、
「へえ、あっしが後を尾けたんですが、本銀町の角で、ふっと横町へ外れたなり――。」
そう言っている時である。道場の入口にいた弟子たちが、驚きの大声を揚げたかと思うと、大次郎――とはしれない
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