浪人とも見ゆる一団の武士達が、わいわい言いながら、あちこち見廻わして集まっていた。さっきそこまで一緒に来た主人を見失った山路主計、中之郷東馬、川島与七郎、北伝八郎など、出羽守側近の面々である。
通りがかりの群集のなかへ、それぞれ眼を走らせながら、北伝八郎が、
「さっき、あの高札場のところまでは、先に立って歩いておられたのだが――。」
川島与七郎は、故法外先生に斬られた手はすっかり癒ったものの、両手の指が十本全部ないので、何があっても刀を抜くこともできない身体である。いつも懐手をして、傍観の役目なのだが、今も、両手を深く懐中へ押し込んだまま、
「しかし、人目につかれる服装《なり》をしておられるのだから、見失うというはずはない。またわれわれが主君のお供をしておって、はぐれたとあっては申しわけが立たぬ。」
「じつにどうも不思議だ。一同の前に立って、高札の前の人混みの中へはいって行かれるところまでは、たしかに拙者も見ておったが――。」
「うむ。この先が判然せんのだ。いつの間にか、ふっと姿を消されて――。」
そう誰かが言いかけた時、きょろきょろあたりを見廻わしていた中之郷東馬が、頓狂な大声
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