のことを願いなさるがいい。くれぐれも、滅茶を願うてはなりませぬぞ。」
「お大名になりたいなどと――。」
親子三人は、声を合わせて笑ったが、久住は、苦渋な顔で、自在鉤《じざいかぎ》の鉄瓶から、徳利を掴み出して、じぶんで注いだ。
明朝早く出発して、豊後への帰国の途につく――そういって、大小をうしろ気味に差した久住は、いつもよりすこし早めに、風に抗《さか》らってかえって行った。
送り出して、三人が炉ばたへ帰ると、
「父《ちゃん》!」庄太郎が、にやにやして、「いいものが手に入ったぜ。さあ、これからおいらの家は、金持ちになる。おいらなんか、お絹《かいこ》ぐるみで、あっはっはっは――。」
大の字に引っくり返って、爆笑《わら》った。
「竜手様さまと来らあ! 竜の手だとよ、うふっ、利いた風なことを言っても、田舎ざむれえなんて、下らねえ物を持ち廻りやがって白痴《こけ》なもんだなあ。」
惣平次は、懐中の竜手さまを取り出して、しげしげと見てみたが、
「こうっ、と。おいらは、何を願うべえかな。」
ふざけ半分の、わざと真面目な顔で、おこうを見た。
庄太郎[#「庄太郎」は底本では「床太郎」]が、代っ
前へ
次へ
全33ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング