に、聞えていた。
「ふうむ。」惣平次は腕を組んで、「三つしか願えぬなら、旦那には、もう用のない品でござりますな。いかがでございましょう。わたくしめに、お譲り下さりませんでしょうか。」
久住は、その、不思議な形をした、牛蒡《ごぼう》とも見える、魚の乾物のようなものを、しばらく、指で挾んでぶら下げて、何かしきりに考えていたが、いきなり、ぽいと、火の中へ抛《ほう》り込んで、
「焼いたがいい。」
あわてた惣平次が、
「お捨てになるなら、いただいておきましょう。」
手で、素早く掴んで、じぶんの膝へ投げ取ると、久住は、じっと深い眼をして、その惣平次と竜手様を見較べながら、
「わしは、もういらぬ。が、あんたも、お取りなさらぬがいい。悪いことは、言わぬ。お焼きなされ。」
「願いごとをするには、どうすればよろしいので――。」
惣平次が、訊いた。
「竜手様を、右手に、高く捧げて、大声に願を唱《とな》えるのじゃ――が、言うておきますぞ。どんなことがあっても、拙者は、知らん。」
もう一度、調べるように、手の竜手様を眺めている惣平次へ、久住は、つづけて、
「願うなら、何か尋常な、分相応《ぶんそうおう》
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