]棒な物を立てやがった張本人はいったいどこのどなた様だか、彦、御苦労だがお前ちょっと嗅《け》いで来てくんろ。」
「へえ。だがなんでも町年寄だと――。」
「おおさ、その年寄に俺あちっとべえ知りてえことがあるんだ。」
彦兵衛は腰を浮かせた。
「勘。」と藤吉は振向きもせずに「われも行け。」
「ようがす。」
と、
「惑信《わくしん》!」
呻くように藤吉が言った。
「え?」
二人は振り返る。またしても、
「惑信!」
「何とかおっしぇえましたかえ?」
「うんにゃ、よくあるやつよ。こりゃあどうも惑信沙汰に違えねえて。」と半ば独言のように藤吉は憮然として、「今日は酉《とり》だのう?」
「へえ――山の神には海の神、おおそれありや。へんかたじけねえや、だ。」
「それだってことよ彦! あの界隈に巫女《いちこ》あいねえか。」
「いちこ[#「いちこ」に傍点]?」
「口寄《くちよせ》よ。」
「知りやせん。」
「物あついでだ、当って来べえぞ。」
「へえ、せいぜい小突いて参りやしょう。」
「うん、日暮前にゃ俺らも面《つら》あ出すから、眼鼻がついても帰ってくるな――勘、われもちったあ身入れろい、なんだ、大飯ばか
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