、こうたんか[#「たんか」に傍点]をきったお兼というお婆さんは、この屑竹の母親なのだ。
六畳一間ほどの家に、およそ人間の知識で考えられるかぎりの、ありとあらゆるガラクタが積まれて、……古紙、雑巾《ぞうきん》にもならない古着、古かもじ、焚きつけになる運命の古机、古文箱。
古いお櫃《ひつ》には、古い足袋《たび》がギッシリつまり、古い空《あ》き樽《だる》の横に、古い張り板が立てかけてある始末。
身の置きどころ、足の踏み立て場もない。
室内のすべてのものには、上に古という字がつくのだ。
お兼婆さんも、まさに、その古の字のつく一人で、古い長火鉢の前に、古い煙管《きせる》を斜に構えて、
「商売に出たら最後、途中で酔っぱらって、三日も四日も家へ寄りつきゃアしない。この極道者めがッ! お母《ふくろ》なんか、鼠に引かれてもかまわないっていうのかい」
この怒号の対象たる屑竹は?
と見ると。
やっと二畳ほどのぞいている古だたみの真ん中に、あおむけにひっくりかえって、酒臭い息、ムニャムニャ言っている。
二、三日前、籠を背負って、
「屑イ、屑イ、お払い物はございやせんか」
と、駒形のほうへ出
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