丹下左膳
日光の巻
林不忘

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)土葬《どそう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|網打尽《もうだじん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)もぐら[#「もぐら」に傍点]
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   土葬《どそう》水葬《すいそう》


       一

 ふしぎなことがある。
 左膳がこの焼け跡へかけつけたとき、いろいろと彼が、火事の模様などをきいた町人風の男があった。
 そのほか。
 近所の者らしい百姓風や商人体が、焼け跡をとりまいて、ワイワイと言っていたが。
 この客人大権現《まろうどだいごんげん》の森を出はずれ、銀のうろこを浮かべたような、さむざむしい三方子川《さんぼうしがわ》をすこし上流にさかのぼったところ、小高い丘のかげに、一軒の物置小屋がある。
 近くの農家が、収穫《とりいれ》どきに共同に穀物でも入れておくところらしいが……。
 空いっぱいに茜《あかね》の色が流れて、小寒い烏の声が二つ三つ、ななめに夕やけをつっきって啼きわたるころ。
 夕方を待っていたかのように、その藁《わら》屋根
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