とんつく!
とんとん、つくつく……!
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 イヤ、お会式《えしき》のようなにぎやかさ。
 指揮をしているのは、例の石金のおやじと、南部御浪人《なんぶごろうにん》細野先生だ。
 ガラッ熊、鳶由《とびよし》、左官《さかん》の伝次――この三人の働きが、いちばんめざましい。鍬をふるい、つるはしを振りかぶり、鋤を打ちこんで、穴は、見るまに大きく掘りさげられてゆく。
 一同泥だらけになって、必死のたたかいだ。おんな子供は、その掘りだした石や土を、そばから横へはこんでゆく――深夜の土木工事。
 泰軒先生は?
 と見ると、やってる、やってる!
 むこうで、結城左京《ゆうきさきょう》をはじめ、刀を取って引っかえしてきた不知火流の七、八人を相手に、
「李白《りはく》一斗《いっと》詩《し》百篇《ひゃっぺん》――か。ううい!」
 酒臭い息をはきながら、たちまわりのまっ最中。

       十五

「李白一斗詩百篇、自《みずか》ら称《しょう》す臣《しん》はこれ酒中《しゅちゅう》の仙《せん》」
 泰軒先生、おちつきはらったものです。
 思い出したように、この、杜甫《とほ》の酒中八仙歌の一節
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