刀を振りまわしながら、護摩堂の中へなだれこむだけで、左膳を斬るでもなく、また、伊賀の藩士たちとやいばを合わせるのでも、むろんない。
 ただ、源三郎たちは、付近を一大混乱の渦に巻きこんだだけだ。でも、それで十分。左膳の濡れ燕にかかった伊賀侍、十数名。
 白い煙のような護摩堂の奥深く、血刀とともにさまよいこんだ丹下左膳。
 そこの荒壁の前に、母娘だき合って失神せんばかりの、お蓮様とお美夜ちゃんを見かけるより早く、
「オイッ! さあ、もう大丈夫だ。良民をとらえて人柱などと、これも、この徳川へのおべっか[#「おべっか」に傍点]か。なんだ、この日光など、私墳《しふん》にすぎぬものを……この丹下左膳が来たからにゃア、かような無道なことは断じてさせぬ」
 と、二人をかかえてのがれ出ようとすると、近くのお作事部屋に火があがった。これも、源三郎が一人に命じて、混乱の度を大きくするために、火をはなさせたのだ。
 この火事が、はるか霧降りの滝の下の作爺さんの眼に映って、折りからそこへたずねて行ったチョビ安、泰軒居士の二人は、作爺さんとともに、悍馬《かんば》足曳《あしびき》に三人鈴なりの体《てい》、雑沓《ざっ
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