急な崖《がけ》を谷底へたどり着いたチョビ安と泰軒先生。
「お爺ちゃん! あたいだよ、安公だよ! 泰軒小父ちゃんもいっしょだよ。江戸からお前をたずねて来たんだ。あけてくんねえ」
いぶかしそうに戸をくった作爺さんが、顔を出して、
「おお安ッ! これはこれは、泰軒先生も」
「さまざまの話はあととして」
と泰軒居士は、いつになくあわてぎみに、
「さっそくじゃが、お美夜坊とお蓮はここにたずねてこんかったかな?」
「ナニ、お美夜とお蓮も、この日光へ来ているのじゃと?……ははあ!」
ポンと平手を打つと同時に、サッと顔色を変えた作阿弥、
「思い当たることがありますわい。母と娘の旅の者を、人柱に捕えたということを聞いたが、さては――」
「サ、われらがうれうるもそのこと。一刻もはやく救い出さねば……と申して、どこにかくされているものやら」
突然、チョビ安が、うしろの山の上を指さして、
「あッ、たいへんだたいへんだ! 山火事じゃないかしら」
さけぶ声に、泰軒と作阿弥が振りあおいで見ると、なるほど……日光の町のかなたに当たって、一団の焔が炎々と空をこがしている。
「町はさわぎらしい――ウム! このど
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