畑の大根でも切るほうが、ましだろう。日光へか」
「ウム、兄貴が行っておるでなア。貴様はまた何しに日光へ」
問われた左膳の一眼は、忘れようとしても忘れることのできない、美しい顔が、そこににっこり[#「にっこり」に傍点]立っているのを認めて、萩乃へ眼で挨拶。
「おうイ! 伊賀の暴れん坊とやら、あんまり荒っぽいこたアしねえがいいぜ。それから丹下の殿様、お藤の姐御、また江戸でお眼にかかることもありやしょう。泰軒先生が言いやしたヨ。君子あやうきに近よらずッてね、ヘッヘッヘ」
と遠くの街道《みち》からこのとき捨て台詞《ぜりふ》の流れてくるのに、振りかえってみれば。
逃げ足のはやいのが、このつづみの与吉の性得。もうドンドン江戸のほうへ引っかえしかけて、はやその姿は、わらじの蹴あげる土煙に、消えさってしまった。
はからずもここに、ふたたび顔を会わせた伊賀の暴れん坊と丹下左膳。
両雄。
剣技をきそう烈々たる敵心をつつむに、一見旧友のごとき談笑のうちに、美女二人を加えての一行七人、小山から小金井、下石橋、あれからかけて、やがてのことに大沢、今市と、おいおい日光へ……。
永遠《えいえん》
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