た櫛巻お藤をはじめ、源三郎手付きの若侍三人、萩乃などあっけにとられているなかで、伊賀の暴れん坊の凜《りん》たる声。
「いつぞやおあずかりのままの真剣勝負だ。貴公よりもおれよりも、剣腕の上の者が、判定に立ちあうのでなければ勝負はせんと、言いはったが、いまここへ、丹下左膳というあつらえむきの立会人が出て来たからな」
「おのれッ!」
刻々に細る息であえぎながら、丹波の指先は虫のようにおののいて、いたずらに帯刀の柄《つか》をはうが、もう抜く気力もないところを!
「…………」
無声の声、無音の音。恐ろしい気合いで、源三郎の振りおろした二の太刀に。
あわれ丹波! 胴首ところを二つにして、街道の砂塵にまみれた血糊《ちのり》の首が、ガッと小石を噛んだ。秋草に飛ぶ赤黒い血。
「とは言うものの――」
と伊賀の暴れん坊は、大あくびをかみしめながら、さし出した血刀を部下の一人に、懐紙一|帖《じょう》ですっとぬぐわせつつ、
「その丹下左膳が、おれより上の腕とは、まだきまらぬテ。まず伯仲《はくちゅう》であろうとは思うが、いずれその決着も、つく折りがあろう、ウフフフフ」
「くだらぬ者を斬ったな。それよりゃア
前へ
次へ
全430ページ中416ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング