十六里でございます。
 あれから野本、まま田、と進んでゆくと。
 小山《おやま》へ近づいた灌木の茂みのかげから……。
 何者の手すさび?
 爪弾《つまび》きの三味線の音《ね》が流れ出て、
[#ここから3字下げ]
「尺取り虫、虫、
尺取れ寸取れ
足の先から頭まで――」
[#ここで字下げ終わり]
 何者? と言うまでもなく……櫛巻お藤は疲れ休めに、藪《やぶ》かげに足を投げだして、たったひとつの、旅の荷の三味線を取りだし、そう思い出したように口のなかで唄っているそばに。
 大刀|濡《ぬ》れ燕《つばめ》をかたえに引きつけ、大の字なりに草の上に寝ころんでいた丹下左膳。
 枕もとに咲きみだれる秋の七草を、野分が吹いて通る。
 と、突然、その藪原から二、三間はなれた街道に、来かかった旅人の跫音《あしおと》が、乱れ立って、
「おおッ、あの唄声! 尺取り虫の唄だッ? 旦那方、御用心なせえ! 櫛巻の姐御がいるからにゃア、あの丹下左膳てエ化け物侍も、どうやらこの近くにとぐろをまいているにちげえねえ」
 と、頓狂な声をあげるのは、まぎれもなくつづみの与吉。
 とたんに、源三郎の大声で、
「ナニ? 丹下左膳が近
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