うちに、枯れ木にまちがって花が咲くように、一風宗匠の生命の灯が、新しい油を得てトロリとわずかに燃えあがったのでしょう。
 ホルモンなどということを、近ごろやかましく言いますが、この享保《きょうほう》の昔に対馬守は、そこらの理屈を知っていたのかもしれない。こけ猿の壺が見つかり、その真偽に判定をくだすためには、もうすこし一風宗匠に生きていてもらわなければならないのだが。
 その肝腎の一風宗匠は、伊賀から江戸までの旅にすっかり弱りはてて、今日明日にも眼をつぶろうというとき、偶然にも一行へとびこんできたのが、このお藤。
 その妖艶な年増ぶりを見たとき、対馬守は、これは一風宗匠の若返りの道具に使える……と思ったに相違ありません。
「まるで赤ん坊みたいだったお爺さんが、このごろじゃアお前さん、りっぱに一人で部屋じゅう歩きまわるし、耳もちゃんと聞こえるようになったしね」
「これからまた育って、その百何年をもう一度繰りかえすのだろう。ついていてやりゃあいいじゃアねえか。功徳《くどく》にならア、いずれそのうち、丹下左膳てえ者がこけ[#「こけ」に傍点]猿《ざる》の壺を持って、鑑定をお願いに出ますと言ってお
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