んの寝起きの面倒を見ることと、毎晩夜中に、こうしてお駕籠で上野の権現様へおまいりして、はるか江戸から、このたびの日光御造営がつつがなく終わるように祈念《きねん》を凝《こ》らすだけがわたしの務めさ」
先に立ってゆく左膳の肩が、こまかく動いたのは、かれ、噴《ふ》きだしたのらしい。
「プフッ! おまえに祈られちゃア、うまくゆく日光も、ぐれはま[#「ぐれはま」に傍点]になるだろうテ」
「おふざけでないよ。あたしだって、こんな馬鹿げたことはしたかアないけれどサ、その一風っていう爺さんの御代参に、こうして毎晩、権現様へ参詣させられるんだもの。ところがね、ふしぎなこともあるものでネ」
とお藤姐御が、笑いながら話したところによると。
濃艶な櫛巻お藤が、朝夕宗匠の世話をやくようになってから、一風さん、とても若返って、別人のようになったというから妙だ。
と言っても、相手は百二十何歳という、伝奇的な御老人のことですから、むろん、二人のあいだにはなんということもないのですが、いったいお藤のような毒婦型の美女からは、その身辺に、一種の精気といったようなものが発散されるものとみえる。毎日それを呼吸している
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