しまおうとするなんて!」
と櫛巻の姐御、姐御の本領を発揮して、いきなり、縫い取りの美しいうちかけをぬぎすてるが早いか、パッと地面へ投げすてた。
「よし! あたしも櫛巻と言われた女だ。こうなりゃあ意地ずく! どこまでだってついていってやるから!」
と、長い裾をグイとはしょると、夜目にも白い脛《はぎ》がくっきりと。
見ると、左膳はもう四、五間さきを、何事もなかったように歩いてゆく。
「オット! いけない、子供たちを忘れちゃあ……」
つぶやいたお藤姐御は、駕籠へ引っかえし、中へ手を入れてごそごそやっていたが、取りだしたのは角ばった風呂敷包み。折り畳の三味線と、塗り箱に入った尺取虫と――商売もの。
これだけは一刻《いっとき》も、そばを離さず、こうして外出《そとで》にも、駕籠へ入れて持ち歩いているものとみえる。
かたむきかけた月を踏んで、ブラリと歩いてゆく左膳のうしろから、裾をからげたお藤姐御が、二、三間おくれてシトシトとついてゆく。
妙な道行き――。
「腰元づとめなど、あたしゃもう、ふつふついやになって、今日は逃げ出そうか、明日は……と思っていたやさき、いいところでお前さんに会っ
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