咲く大輪の花のようにたち現われたのは、御殿女中姿の櫛巻の姐御……あっけにとられた左膳の肩を、ポンとたたいて、
「まあ! 今までどこにどうして――会いたかったわ」
と寄りそった。夜中にこっそり駕籠を急がせて来るのだから、テッキリこけ猿の壺……に相違ないと思ったのに、あらわれたのは意外にも女! しかも、駒形の尺取横町に残してきたはずのお藤が、こうした変わった風体《なり》で、柳生家の駕籠に乗っていようとは!
おもしろくもないといった顔、不愉快そうに濡れ燕を鞘へ納めた左膳は、
「おめえか……えらく出世をしたものだなア、どういういきさつで、そんな身分になったのか知らねえが、おらあおめえには用はねえのだ。また会おうぜ」
皮肉に口尻《くちじり》を曲げて言いはなった左膳、足早に歩きだした。
櫛巻お藤には、相変わらずそっけない左膳でした。
「マア、お前さんのように、情の剛《こわ》い人があるかしら――わたしゃこうしていやな芝居をつとめる気で、こんな窮屈な思いをしながら、一日半時だってお前さんのことを忘れたことはないのに、ヒョッコリ会ったと思ったら、もうすぐ、ろくすっぽ話も聞かずに、そうやって行って
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