活《い》けてくれた花|籠《かご》である。
秋の七草をいけたあの籠の中には、竹筒が入っている。そうだ!
お蓮様は裾を乱して、片隅の文机《ふづくえ》の上の硯箱《すずりばこ》と、料紙《りょうし》入れへかけ寄りながら、
「お美夜! お前に、こんなことをさせたくはないけれど、二人の命の瀬戸際だからね。今母ちゃんがお手紙を書いて、あそこの竹筒へ入れるから、お前はそれを持ってこの裏山づたいに谷川へ――いいかえ!」
御代参《ごだいさん》
一
宇治道中の茶壺駕籠を、荒しに荒して、東海道に白い旋風が渦《うず》まくとまでの評判をたてた丹下左膳。
いくつとなく壺を手がけても、めざすこけ[#「こけ」に傍点]猿の壺には、まだ見参しない。
壺中の天地、乾坤《けんこん》の外《ほか》。
一つ事に迷執《めいしゅう》を抱き、身、別世界にある思いの左膳は、朝夕夢のこけ[#「こけ」に傍点]猿《ざる》を追って、流れ流れてふたたび江戸へ……。
第二の故郷。
白髪、江《こう》を渉《わた》り、もとの路をたずぬ。何年も江戸を明けたわけではないけれど、しきりに、そんな気がしてならない。
山野、
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