めぐっている。
 その、狂気のような、人相の変わった母の顔を、お美夜ちゃんは下から、あどけなく見あげて、
「母ちゃん、お梶は眠ってしまったよ。こんなところでうたた寝をして、風邪を引くといけないわねえ」
「ええ、そう……」
 答える心もうわの空に、お蓮さまがじっと考えこんでいると。
 どんな暴風雨《あらし》の最中にも、ピタリと物鳴りが止んで、ぽつんと切り離されたように音のしない、ふしぎな、無気味な瞬間があるものです。
 今がそれ。
 雨も風も、急に暴威をおさめて、もみ抜かれた樹々、はためきわたっていた家が、にわかに、はたと鳴りをしずめると、暗い地獄へおちこむような静寂。
 そのしずけさの底に、淙々《そうそう》と水の流れる音がする……のは、この家の裏からおりた谷間《たにあい》にささやかな渓流のあることを示しているので。
 毎日、昼間お蓮様は、縁のはしに立って、はるか眼下の杉の根を洗う、この小流れを見おろしたことを、彼女は、いま思い出した。
「そうだ! 運を天にまかせて――それよりほかに方法《みち》はない」
 ひとり胸に答えたお蓮様が、あちこち室内へ走らせた眼に、とまったのは、お梶が床の間に
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