の御霊《みたま》を安んぜしめるために、人柱をささげるということは、ほかにも聞いたおぼえがある。
すると、ちょうど今夜のように。
黒暗々の夜空をつらぬく一|閃《せん》の稲妻のごとく、このときお蓮様の心に、すべての事情がうなずかれたのだった。
人柱! ありえないことではない。
どこかの壁へ、このわたしとお美夜を生きながら塗りこめて……そういえば、思い当たるふしだらけである、あの鹿沼新田《かぬましんでん》の関所で捕まったとき、母娘《おやこ》かということを、あんなに念をいれてきいたのも、さては、母と娘の人柱が必要であったのだ!
今はこうしてここに、自分たちを飼っておいて、そのときが来るのを待っているに相違ない。
血ばしった眼で、空《くう》をにらんだお蓮様は、
「お美夜! サ、しっかりして……!」
と、思わず、小さな肩を握りしめていた。
八
これですべてが読めた!
お蓮様はやつぎばやに、お梶へ向かってうなずくと、そのわかったという意味が、聞こえぬ耳にも通じたとみえ、お梶はニッコリするとともに、さきほどからの手真似話に精根つき果てたとみえ、ベッタリそこへくずおれ
前へ
次へ
全430ページ中381ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング