その悲しそうな声ったら……」
 とお美夜ちゃんは、長いたもとで自分の顔をおおって、泣くまねをして見せる。
「サアサ、それよりも早く雨戸を――ホラ、こんなに雨が吹きこんで」
 母娘《おやこ》二人が手を貸し合って、やっと座敷の戸をしめ終わると。
 眼を真っ赤に泣きはらしたお梶が、行燈《あんどん》を持ってはいって来たが、そのまま立ち去るかと思うと、灯《あか》りを部屋のほどよいところに置き……このときだった、お梶がいきなりお蓮様のたもとを握ったのは。
「オヤ、どうしたのだえ、お前は!」
 振りむいたお蓮様は、びっくりした。
 お梶の顔の色といったらない。あおざめた面色《めんしょく》に、眼は血ばしり、頬には、涙の糸とほつれ毛を引き、その毛の先をきゅっと口に噛みしめて、物すごいばかりの形相。
「アラ、気がふれたのかしら、この娘《こ》は!」
 と、お蓮様はギョッとしながら、必死の力をこめたお梶の手に、べったりくずれるように、そこへすわらせられてしまった。
 と、お梶は、あっけにとられてそばに立っていたお美夜ちゃんを、いきなり片手に引き寄せて、痛いほど抱きしめ、
「ムムムムムムムム」
 もの言いたげな
前へ 次へ
全430ページ中377ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング