持で、またションボリと家へはいると、ただ一人つけられている若い女中が背戸口から秋草を取ってきて、床の間に生《い》けています。お蓮様母子をなぐさめようという、やさしい心があるのかもしれない。
お蓮さまはそのそばへすわって、
「ねえ、なんとかならないのかしら。お前、ひとっ走り造営奉行所へいって、上のほうのお役人様に……ああ、そうだったねえ。お前は唖だったねえ。ええイじれったいッ!」
娘はニッコリ笑うばかりで、どこ吹く風といったように、活《い》けた秋草をながめては、そこここ葉をはらっている。
焦慮とも、懊悩《おうのう》とも、いいようのない日がつづく。
それでいて食事だけは、三度三度二の膳つき。
たいせつな人柱。
いざ用に立てるまでに、母娘もボッテリふとらせておこうという肚《はら》かもしれない。これじゃアまるで、市場へ出すのを楽しみに、豚を飼っているようなもの――。
すると、ここに。
人情というものは、まことに微妙なものです。
仇敵《かたき》同士でも、ひとつ屋根の下に起き臥ししていれば、いつしかそこに、情がわく。ことに不具の者ほど、そういった人なつっこい気持は、強いと言います
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