籠に乗せて、まっすぐにこの家へ連れてこられたのだけれど――」
その途中。
駕籠わきに引き添う侍たちのヒソヒソ話に。
「大切な客人」とか、「運よく母娘づれが通りかかるとは、幸《さい》さきがよい」とか――。
そうした言葉が、チラチラとお蓮様の耳にはいって、駕籠のなかの彼女に、しきりに首をひねらせたのだったが。
この百姓家は、前に用意がしてあったものとみえる。
きっと持主から買いとって、家を明けさせ、客を迎える準備をしておいたものとみえて、ここらの山奥の百姓家にしては、内部は小ざっぱりと掃除され、最近手を入れたあとも見られるのである。
翌朝にでもなれば、きっと役人の前へ呼び出されて、どうしてこういう予期もしない好遇を受けるのか、その理由《わけ》もわかるであろうから、そのとき自分たち母娘は、この日光造営方の工人の一人、彫刻名人作阿弥の身寄りの者で、彼をたずねて入晃《にゅうこう》したということを、申しあげればよい……。
お蓮様はそう思って、旅の疲れにこの思いがけないもてなしをいいことに、その夜は手足をのばして休んだのだったが……。
翌日になっても、翌々日がきても、イヤ、何日たって
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