言のようにつぶやいた。
折り重なる日光の山々、男体《なんたい》、女体《にょたい》、太郎山、丸山などが、秋の空気の魔術か、今日は、眉にせまるように近々と望まれる。
お蓮様の言葉を聞きつけたお美夜ちゃんが、愛らしくそばへ寄りたって、
「ねえ、母ちゃん、ここはもう日光なんだろう? いつお爺ちゃんのところへゆけるの?」
お蓮様は、屈託気《くったくげ》に、帯の胸元へほっそりした両手をさしこんで、
「サア、それが母さんにも、サッパリわからないんですよ」
「アラ、じゃ、まだここは日光じゃないの?」
「ほほほほ、いいえ、日光は日光なんですけれど、いつお爺ちゃまにお眼にかかれるか……それがねえ」
二
じっと考えこんだお蓮様は、腑に落ちかねるおももちで、
「ほんに、どうしたというのでしょうねえ。あの鹿沼新田のお関所でお調べを受けたとき、母娘《おやこ》かということを妙に念を入れてきいていたようだけれど」
風に話しかけるように、お蓮様はひとりごとをつづけて、
「母娘ということに、何か意味があるかしらん……ハイ、たしかに母と娘だと言うと、お役人衆がマアたいそう喜んで、さっそく二人を駕
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