て、一心不乱に制作したいという彼の望みにしたがって、この、もっとも人跡絶えた渓谷を卜《ぼく》し、対馬守の手で急ぎ建てられた、いわば、これが、作阿弥のアトリエなのだ。
たった一人――。
とは言ったが。
それにしては、ふしぎなことがある。その工作部屋から、ときどきさかんに人の話し声がもれてくるので。
だが、朝夕作阿弥が、小屋のそばを流れる谷川の縁にしゃがんで、土釜《どがま》の米をすすいだり、皿小鉢を洗っているのを、むこう山の木の間から、樵夫《きこり》が見かけることがあるくらいで、住んでいるのは、確かに作阿弥老人ひとりのはずだが……。
「なア、りっぱなものを彫りあげて、ぶじに納めることができれば、大仏師|法眼康音《ほうげんやすね》、狩野探幽《かのうたんゆう》、左甚五郎など、日光結構書に伝わる名人巨匠と肩をならべて、お前も長く権現様のおそばに残ることになるのじゃ。ナア、そう思ったら、しばらくジッとして立っておるぐらい、なんのこともあるまいが……」
今も、この作事小屋から、しきりに作阿弥の話し声が流れ出て、
「ホラ! ここへひとつ、こう、グッと鑿《のみ》を入れると、ソラどうじゃ、全体が
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