して、旅人の姿もないままに、関所役人たちはワイワイ雑談にふけっている。
雲の裏に、ドンヨリした月があるかして、白い粉のような光が立ち木のこずえ、草の葉の露に浮動しています。
その篝火《かがりび》のかげに、役人どもの顔が赤鬼のように、遠く小さく映《は》えているのを、はるかかなたから望み見ながら、疲れた足を引きずって、このとき、関所へ近づいてくる大小二つの女の姿がある。
旅のこしらえに細竹の杖をついた、母らしい人は、片手に、女の子の手を引いて歩きながら、
「くたびれたろうね、お美夜。足が痛くはないかえ?」
「いいえ、あたいね、お山へ連れてゆかれたお爺ちゃんのことを思うと、足の痛いのなんか、忘れてしまうの」
「マアそんなにねえ――お爺ちゃんにそんなになつくまでの長いあいだ、あたしは母でありながら、このかあいいお前をうっちゃっておいたんだったねえ」
「お爺ちゃんはネ、いつもあたいに、お前の母ちゃんは人非人《ひとでなし》だって言っていたよ。だからあたし、ちいちゃいときには、あたいの母ちゃんは人間じゃないんだと思っていた」
「もうそんなことは言わないでおくれ。だけど、ほんとうにそう思われても
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