して日光御造営が始まって、周囲四十里、お山どめになってからは、人別のきびしいことは天下周知のことだから、なにも今頃ノコノコ母娘《おやこ》連れで、この騒がしい日光へ出かけてくるものずきも、ないであろうテ」
「それはそうだとも。これでまた、お山を越えてどこかへ通ずる街道筋ならまた格別、ほとんど日光へ行くだけの日光街道、思うとおりに、母娘の人柱が網にかかってくれればよいけれどもなあ」
 杉の木立ちのあいだに、ものものしい竹の矢来《やらい》を結びめぐらし、出口入口には炎々《えんえん》たる炬火《かがりび》が夜空の星をこがしています。
 この日光御修覆のあいだだけ、登晃口《とこうぐち》のひとつである鹿沼新田《かぬましんでん》に、あらたにできたお関所です。
「いったい誰が言い出したことだ。護摩堂の壁に、母娘の人柱を塗りこめねばならぬなどとは」
「シッ! 声が高い。この御修営がとどこおりなく終わることを祈願されて、殿が思いつかれたということじゃ」
「イヤ、誰が言い出したにしろ、そんなことはいっこうかまわん。拙者等は役目として、人柱にもってこいの母娘二人連れをとらえさえすればよいのじゃ」
 往来はシンと
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