じゃア、わっちは出なおしてきやすから、ヘイ」
 引っこみのつかなくなった銅義、こそこそ框《かまち》へにじり寄ると、そこでチョビ安とお辞儀をして、出て行ったが、誰ひとりそれに気のつくものもない。
 じっと眼をつぶって、考えこんでいる泰軒先生、
「安大人《やすたいじん》」
 と静かに声をかけて、
「これをとめることはできまい」
「エ? するとなんですかい、お美夜ちゃんとお蓮さんを、日光へ出してやろうとおっしゃるんで?」
「父同様に育ててくれた祖父《そふ》に、一眼会いたいというお美夜坊のまごころ――また、不孝をしつづけてきた老父に、最後の詫びを願いたいというお蓮どのの赤誠《せきせい》。このふたつがいっしょになったのでは、どう考えても、それをとめる力は人間にはないぞ、チョビ安」
「なに言ってやんでエ、泰軒坊主メ! なら、おいらもいっしょにゆかア」
 とチョビ安は、ぐいと眼をこすった。

       六

「そううまく鴨《かも》が引っかかればよいがのう」
 六尺棒をトンと土について、こう言ったのは、この関所をあずかる柳生の役人の一人、津田|玄蕃《げんば》というお徒士《かち》。
「そうさの。こう
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