しかたがない。だが、もうもうこれからは、けっしてお前をはなしはしないよ」
 江戸から泊りを重ねて、もう日光までは眼と鼻のあいだ。ここまで来るあいだに、旅はことさらに人を近しくするもの。いわんや、血の通う母と娘である。
 お美夜ちゃんも、もうスッカリお蓮様に親しんで、脚絆《きゃはん》、草鞋《わらじ》がけのかあいい足を引きずりながら、
「ねえ母ちゃん、もうじき日光なの?」
「ええええ、あとほんのすこしのしんぼうですよ」
 と、お関所へさしかかったときである。
「待てッ」
 横あいから、グッと棒がつき出て立ちはだかった一人の侍、
「姓名住所は、何も聞かんでよろしい。ただひとこと――お前たちは、母娘《おやこ》であろうナ?」

       七

 以前のお蓮様なら、眉ひとつ動かさず、
「無礼をすると容赦《ようしゃ》はいたしませぬぞ」
 ぐらい、ちょいと威猛高《いたけだか》なところを見せたはずだが。
 今は、名もない旅の女。
「ハイ」
 と、口のうちに答えつつ、手ばやく裾を引きさげ、そこへしゃがみこみながら、
「お美夜や、コレ! 立っていてはいけません。お侍様に失礼があっては……」
 と手を引っ
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