り、
「奥と言ってもひとまたぎなんですが、おや、また先生は大の字に引っくりかえっておいでですよ。アノ、泰軒先生、屋根屋の銅義《どうよし》さんという人がお見えですよ」
 と取りつがれた銅義は、
「ぴらごめんねえ。あっしゃア、先生様にさばいてもらって、かかあのちくしょうを追ん出そうと思いやしてね」
 ズカズカあがりこんで、泰軒居士の前にピタリと膝を並べた。
 例によって、巷の身の上相談なので。
 このトンガリ長屋は、泰軒先生の徳風にすっかり感化されて、今ではトンガリ長屋とは名のみ、ニコニコ長屋になってしまって、江戸名物がひとつ減ったわけだが。
 このごろでは、先生の高名を聞き伝えて、こうして遠くから、人事相談を持ちこんでくるんです。
「おめえが泰軒てエ親爺《おやじ》かい。お初《はつ》に……わっしゃア深川の古石場に巣をくってる銅義ってえ半チク野郎だがネ。ひとつおめえさんに聞いてもらいてエのは、わっしゃあ性分で、鯖《さば》ア見るのがきれえだってのに、かかあの奴やたらむしょうにあの鯖てエ魚がすきでごぜえやしてね。きょうも鯖、あしたも鯖、どうも家風に合わねえから――」
「なあんだ、大変な人がとびこ
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