なしの、わが子お美夜のうえであった。
 世をすて、何もかも振り切って、とびこむようにここへかけつけて来てみると、入れちがいに父の作呵弥は、日光御用に召し出されてしまう。
 しかも。
 わが子に違いないお美夜ちゃんは、いつまでたってもなじんではくれず、チョビ安という腕白小僧といっしょになって、白い眼を見せるばかり。
「あんたが悪いのじゃから、辛抱して母のいつくしみを見せにゃならぬ。いわば、自業自得というものじゃでナ」
 と、この、人情の機微をうがちつくした泰軒居士の言葉が、この際お蓮様にとっては、わずかのたよりになるのでした。
 それにつけても。
 なんという変わりようでございましょう。
 まるで別人。
 ここらの長屋のおかみさんといってもいいような、つっかぶりようで、引っつめの髪は横ちょに曲がり、真岡木綿《もうかもめん》のゆかたの襟に、世話ぶりに手拭をかけて、お尻のところにずっこけそうに、帯を結んだ姿。これを道場の連中に見せたら、なんというでしょう。
 貝細工のようだった指も、今は水仕事にあらくれて、
「サアサア、どうぞ。ええええ、先生は奥に――」
 と、ちょっと家内《なか》を振りかえ
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