、どう思っているんだい? 好きなのかい?」
お美夜ちゃんは言下《ごんか》に、
「大きらいだわ。とてもお母ちゃんなんて思えないの」
「そんなら、いっしょに日光へ行くなんてよしねエ」
「だってサ、あたい、お爺ちゃんに会いたいんですもの」
いつまでたっても同じ問答。
四
いつまでたっても同じ問答だから、チョビ安はお美夜ちゃんを、グイグイ引ったてて家へ帰って来ました。
長屋には、もうすっかり灯がはいって、主人のいない作爺さんの家には、狭い水口でお蓮様が、かたことささやかな夕餉《ゆうげ》のしたくを急いでいる。
人間って、気持の持ちようや環境ひとつで、こうも変わるものでしょうか。
昨日《きのう》までは、剣術大名司馬道場の御後室様として、出るにも入るにも多勢の腰元にとりまかれ、妻楊枝《つまようじ》より重いものは持ったことのないお蓮様。
源三郎への恋をあきらめ、丹波とともに仕組んだ道場乗っ取りの陰謀にも、ふいと思いを断った彼女。
眼が覚めたように思い出したのが、何年となくこの長屋に置きざりにして、暑さ寒さの便りひとつしたことのない父なる作阿弥と、その手もとにあずけっぱ
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