葬にするのじゃ。これでは、いかな伊賀の暴れン坊も、またかの丹下左膳といえども、二つの命がないかぎり、二度とわれらの面前に立つことはなかろう。いや、これで仕事はできあがったというものじゃ。では、われら一足先へまいるからナ」
言葉を残して、丹波の一行はそのまま、さながら悲しみの行列のように、底深い夜の道へと消えて行く。
お蓮様のみは、これでいよいよ源三郎が地底の鬼となるのかと思うと、さすがに、心乱れるようすで、
「今となって、源様を助けようとも思わなければ、また、もう手遅れにきまっているけれど、せめては、水につかった死骸なりと引きあげて、回向《えこう》を手向《たむ》け、菩提《ぼだい》をとむらうことにしたら……」
その声を消そうと、峰丹波は大声に、
「御後室様、おみ足がお疲れではございませぬか。サア、出発、出発!」
と、さけんだ。
十一
お蓮さまはそれでも、後ろ髪を引かれる思い。
「源様ッ!――源三郎さまッ!」
胸をしぼるような最後のひと声。
かけもどって、おとし穴をのぞこうとするお蓮様に、きっと眼くばせして丹波が下知。ほとんど手取り足取りにかつがんばかり……
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