リしたからだをそこで立ちどまらせて、穴埋めの役割の連中へ、そう最後の命令をくだした。
 町人体、百姓風に扮した道場の弟子ども、いま、手に手に小屋にあった農具を持って、葬列を見送りかたがた、ここまでいっしょに来たところだ。
 別れるのだ、ここで。
 丹波とお蓮様は、悲しみの顔をつくって、殊勝《しゅしょう》げに、これからショボショボと妻恋坂へ。
 残る穴埋め係の中から、宰領格《さいりょうかく》の結城左京《ゆうきさきょう》が進み出て、
「御師範代、御心配無用」
 と丹波へ笑いかけ、
「これからすぐに埋めにかかれば、ナニ、さほどの仕事ではござりません。たちまちのうちにふさぎ得ましょうほどに、一刻ばかりの後には、途中で追いつくでございましょう」
「ウム、いそいでやってくれ。水はもう、だいぶ穴へたまっていることであろうな」
「むろん、すでに水浸しでござろう。この三方子川《さんぼうしがわ》の川底から、細き穴をうがち、はじめは点々と水のしたたるように仕組みおきましたが、その穴がだんだん大きくなり、ドッと水が落ちこんだにきまっています。今ごろは土左衛門が二つ、この地の底に……はっはっは」
「そこをまた土
前へ 次へ
全430ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング