、ガラッ熊、鳶由《とびよし》、細野浪人、この四天王格。先頭にたって。
たいへんな助勢。
十
「それでは、われらは、この源三郎身がわりの焼死体と、偽のこけ猿の焦げた壺を守って、お蓮の方ともども、これよりただちに道場へ引っ返し、源三郎の死んだことと、こけ猿の壺なるもののもう世の中からなくなったことを、すぐにも発表する手はずだから、よいか、その方《ほう》どもは一刻を争い、このおとし穴を埋めてしまえ。手ぬかりのないようにいたせよ」
戸板にのせ、白布でおおった身がわりの死骸と。
真っ黒に焼けた、にせのこけ猿と。
この二つを先にたてた峰丹波の一行。
お蓮様を中に、さながら葬式の行列よろしく、闇をふくんで粛々《しゅくしゅく》と寮の焼け跡へさしかかった。
月のない夜は、ふむ影もない。
つい一昼夜前まで、このあたりにめずらしい、数寄《すき》をこらした寮の建物のあったあたり、焼け木が横たわり、水と灰によごれた畳、建具がちらばり……まだ焼け跡の整理もついていない。
何一つ落ちてもいないのに、食をあさる痩せ犬も、ものさびしい。
行列の殿《しんがり》をおさえて行く峰丹波ガッシ
前へ
次へ
全430ページ中33ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング