前後左右からお蓮様をとりかこんで、行列は、歩をおこして去った。
 あとには、穴埋め役の一同。
 生あたたかい風の吹く深夜の焼け跡に同勢七、八人、あんまり気持よからぬ顔を見あわせて、
「穴の底におぼれてるやつを、土で埋ずめりゃア、これほど確かな墓はねえ。目印に、捨て石の一つもおっ立てておいてやるんだな」
「後年、無縁仏《むえんぼとけ》となって、源三郎塚……とでも名がつくであろうよ」
 しめった夜気に首をすくめて、誰かが大きなくさめ。
「ハアックショイ! そろそろ始めようではござらぬか」
「フン、気のきかねえ役割だ。こんな仕事は、早くすませるにかぎる」
「しかしなア、なるほど穴は、細いものにすぎぬが、下へいって、かなり大きな部屋に掘りひろげてあるというではないか。そこまで埋めるとなると、七人や八人では、朝までかかっても追いつくまい」
「そうだ、最初に、大きな石の二つ三つもころがしこんで、穴の途中をふさぎ、その上から土をかぶせればよいではないか」
 それは思いつきだとばかり、結城左京《ゆうきさきょう》をはじめ二、三人が、手ごろの石を見つけにあたりの闇へ散らばって行く。
 ほかのやつらは
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