水桶のかげに立って、
「えエイちくしょう、泣かしゃアがる」
その豆絞りで、グイと鼻の先をこすりながら、チョビ安、二人の前へ現われてきた。
「こう、石金の爺《とっ》つあん、まあ、聞いてくんねえ。おめえも知っての通り、あの作爺さんが柳生対馬の家老に連れられていってから、お美夜ちゃんはおめえ、食も咽喉《のど》へ通らねえ始末で、夜も昼も、こうして泣いてばかりいるんだよ。それを見ると、おいらも――おいらも、泣けてくらあ」
「ア、安さん、お前さんそこにいたの? いま石金のおじさんに聞いたんだけど、日光というのは、あの、ホラ、むこうの伊勢甚《いせじん》の質屋の蔵の上に、火の見やぐらが見えるだろう? あのやぐらの右のほうに、お魚の形をした小さな雲が流れているわね。あの下が日光なんだとサ。お爺ちゃんは、あそこにいるんだねエ。あたい、あの雲になりたい」
「アレだ」
とチョビ安は、ホトホト弱ったという顔で、石金を振りかえり、
「おウ爺《とっ》つあん、子供につまらねえことを言わねえでもらいてえ。おいらがなんとかして、忘れさせようとしているのに、爺つあんがそんなよけいなことを言っちゃア、お美夜ちゃんはますま
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