たように主水正は、顔を上げました。
「ソレごろうじろ。かかる老骨では、絢爛《けんらん》をきわめるかの護摩堂の人柱には、役だち申さぬ、アア助かった」
「さようか。女と子供、しかも、母子二人でなければならぬとナ、ハアテ……」
 この護摩堂の天井は唐木《からき》の合天井《ごうてんじょう》になっておりまして、そこに親獅子《おやじし》仔獅子《こじし》の絵がかいてあった――今はないけれども――その母獅子のほうは、狩野秀信《かのうひでのぶ》の作。
 仔獅子のほうは、秀信の子|狩野助信《かのうすけのぶ》の筆だと伝えられていた。
 そのせいでしょうか、この護摩堂の壁に母子の人間を塗りこめなければ、こんどの大造営は成功しない……たれ言い出したともなく、今こういう話が持ち上がっているのです。
「それでは、通りがかりの旅人をひっとらえて、人柱に塗りこめるよりほかみちがあるまい。主水! そちに一任いたす。鹿沼新田《かぬましんでん》の関所に出張《でば》って、しかるべき母と子の旅の者を物色いたせ。極秘にナ――ぬかるまいぞ!」

   母娘旅《おやこたび》同行二人《どうぎょうふたり》


       一

「オウ、
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