がら、
「しかし、言い出したものが人柱に当たるということは、昔からよく例のあることで」
「さればさ」
 対馬守は重々しく、
「出雲国《いずものくに》松江《まつえ》の大橋をかけるとき、人柱を立てることになったが、誰もみずからすすんで犠牲《にえ》になろうという者はない。そのとき、源助なる者が、着物に継ぎのある者を探して人柱にするがよいと言い出したところが、調べてみると、その源助の背中に横つぎが当たっていたので、いい出した源助が人柱に立てられ、これで、さしもの難工事も落成し、源助は死後長く橋桁《はしげた》を守っていまだに源助柱という名が残っておると申す。どうじゃナ主水正、貴様も、もう年に不足はあるまい。今になってたれかれと人柱を探すより、貴様、その護摩堂の壁へはいって、主水壁……イヤどうも、これでは語呂《ごろ》が悪い。田丸壁、ははははは、ひとついさぎよく人柱に立たんか」
「殿、御冗談が過ぎまする」
 滅相もないという顔で、主水正が平伏するのを、別所信濃守は静かに見やって、
「イヤ、柳生殿、護摩堂の人柱は、婦人《おなご》と子供――それも、母子《おやこ》づれがもっともよいということで」
 助かっ
前へ 次へ
全430ページ中333ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング