対馬守。
だいたいこの江戸家老というものは、殿様がお国詰めのあいだ、在府の諸家諸大名と交際するのが、その本業。
いわば外交官。
いくら武をもって鳴る柳生藩の家老でも、どっちかといえば文官であって、主水正、武人ではない。
ですから。
このとき主水、すこしもさわがず――とはまいりません。
おおいにさわいだ、見苦しいまでに。
「ナ、何をする! これ、気でもふれたか」
泣くような悲鳴をあげて、横っとびにスッ飛んだ主水正、今まで気どりかえっていた殿様役も、すっかり忘れて、
「は、発狂されたか! ワ、わしは相手ではない。わ、若君、ゲゲ、源三郎様が、貴殿の敵ではないか」
そのあわてぶりが、よほどおかしかったと見えて、人の悪い源三郎は、刀を引いてゲラゲラ笑いだしてしまった。
これが唯一の逃げ路《みち》と、丹波は一生懸命、
「偽物ッ! からくりは見抜いたぞ!」
叫びながら、釣瓶落しをまっこうに振りかざして、なおも主水正目ざしてとびこもうとする。
「柳生対馬守に、この丹波の刀《とう》が受け止められぬはずはない。失礼ながら打ちこみますぞ、対馬守様!」
大声に叫びながら、丹波は一心に主水
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