正へ斬ってかかる。
「待った! 待った! とんだ気ばやの御仁《ごじん》じゃ。わしは、ただ、殿の言いつけでまいっただけで、近ごろもって迷惑至極!」
周章狼狽をきわめた主水正は、立ち木の幹を小楯にとって、
「コレ、人違いじゃというに、わしは対馬守様ではござらぬ。家老の田丸――」
丹波はこれで、一時のがれに命を拾おうという気だから、
「田丸もたまらんもあるものか。サア、判定役の手腕から先に、見参いたしたい」
「もし! 源三郎様ッ! 笑ってばかりいずと、この無法者を、お取りおさえください」
立ち木を中に、二、三度堂々めぐりをして、猫と鼠のように追いつ追われつしていた主水正は、機を見ていっさんに裏木戸から、外の妻恋坂の通りへ抜け出してしまった。そして、ほうほうの体《てい》で、麻布林念寺前の上屋敷へ引きあげていったが――。
峰丹波もガッチリしたもので、釣瓶落しを鞘におさめた彼、悠然たる態度で源三郎の前へ引っかえして来た。
「条件が違うではござらぬか、源三郎殿、拙者よりも貴殿よりも、一段と業《わざ》の上の者が判定に立ちあうのでなければ、他流仕合は、いっさいごめんこうむる。これが、当十方不知火
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